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名著と幻想


●『山月記』の虎出現シーンや『西瓜糖の日々』の虎出現シーンのような象徴的コントの美。

不条理だけどやけに絵的に強烈だな、と思わせられて読者のわたくしは幻想にいきなりお立ち寄り、となる。

『真夜中の弥次さん喜多さん』は漫画だが、同じく視覚的に幻想に引きずり込むテクニックが上等である。



●安部公房の『壁』も不自然さのないファントム・コント。

だが、やはり『鏡の国のアリス』は最高度だ。

また、不思議ちゃんエッセンスだけを抽出したような稲垣足穂の『一千一秒物語』はハイパー高速幻想の恍惚を与えてくれる。

絵本の『ちびくろさんぼ』は強引に読者を幻の爪で鷲掴みしてくる驚異。



●バリー・ユアグローの小説は描写の文末、セリフのあとの地の文、それらが現在形もしくは現在進行形で成り立っている。

厳粛な軍規のように。

それは、臨場感と躍動感を読者に与えるだけではなくて、あなたはすでにこの幻想に参加せざるを得ないのですよ、という著者からの呪いなのかもしれないのだ。



●生活と思想を饒舌性に任せて描かれただけの小説。

ヘンリー・ミラーの小説とはあらゆる他者が他者のまま生かされている稀有なモノフォニー芸である。

落語的なオチさえない泥沼の輝きだ。

サザエさん的、ちびまる子ちゃん的ポリフォニーがない、つまり多声の不在によって、それは不条理な幻想劇となる。



●『旧約聖書』とは、チョコレートみたいな泥で世界を埋め尽くす幻想譚。

それは漏斗型にひろがっていく神様の慈悲のようだ。

慈悲は不意の悪意のかたちにもなる。

多分に上から目線の神様はきっとチョコレートが好きだった。

甘さは毒であり罰でもあるからだ。



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